感想:倉田 英之『R.O.D〈第8巻〉』
ねねねは黙って、ウェンディの言うことを聞いている。
「……わたしたちが、それを隠しても……事実は、ずっと残ります……ずっと、ねねねさんを苦しめることになります……。誰でも、どんな状況でも、自分がしたことは、自分で責任を取らないといけないんです……それが、生きることだと思うんです……」
あらすじ(ネタバレ)
読仙社に囚われ、頭領であるチャイナ(ロリおばあちゃん)にとある衝撃的な世界の秘密について知らされる読子は、誰に正義があるのかわからなくなる。大英図書館を操るジェントルメンにも疑念を抱くことになるが、読仙社も残忍な手口で多くの人を傷つけているし、なによりナンシーを人質を取っている。
ねねねとウェンディは読子とは別のルートで大英図書館の欺瞞を知る。
グーテンベルグ・ペーパーの解読を終えたファウストは読子に敵対宣言をしたうえで、逃亡の手引きをする。読子はナンシーを救うためにチャイナを攫うが、ナンシーは能力と魚雷を使って既に英国の潜水艦に保護されていた。
感想
てこ入れ兼噛ませ犬であろう五鎮姉妹とかも出てきて、随分とバラエティ色豊かな感じになっている。彼女らの登場で、読子に振られるであろう王炎の落ち着く先も見えてきた感じ。
この話の流れならジョーカーの名にふさわしいのはファウストだろう、と思わなくもない。ジョーカーさんは嫌いじゃないけど野心丸出しでどうも。
グーテンベルグ・ペーパーというチートアイテム(ドラゴンボールみたいなもんやねこのレベルだと)。さらに武器も紙だったり文鎮だったり、拠点が図書館だったり――という「本」に纏わるアイディアは面白いのだけど、ちょっとファンタジー設定の小道具に終始してる感あり(読子の過去の傷に関わってる絵本や、死んだ恋人の日記なんかもあるにはあるけど)。R.O.D(Read or Die)というタイトルだからこその内容がもうちょっとあっても良いかな、とちょっと贅沢な希望も持ってみたり。本に纏わる哲学的なことでも豆知識的なことでも良いのだけど――ただ本自体が読者からすると身近過ぎて難しいって面はあるか。
あとちょっと気になる点としては、話が大きくなればなるほど面白くなくなってきてるような気がしてるところ。ただこれはそれぞれ別々に動いている人たちの接触が殆どなかったので(ドレイクとナンシー達ぐらいか)、そこが物足りない部分の正体かも知れない。焦らされてるってことなんだろうな。読子が大量の本を前にお預けを食っているのと同じように。そういう意味ではねねねと読子が合流するだけでだいぶ面白さが変わってくると思うので、次巻以降に期待。