感想:有沢まみず『ラッキーチャンス!4』

ラッキーチャンス! 4 (4) (電撃文庫 あ 13-24)
有沢 まみず
アスキー・メディアワークス
売り上げランキング: 273
おすすめ度の平均: 4.0
4 ニワトリの登場でいろんなコスプレが出てきた巻

 がくがくしている雅人に対してキチはきらきらと輝く瞳で雅人を見上げた。彼をきゅっと抱きしめつつ、褒めてくれる言葉を待つ。
「マサト。わたしの下着どうだった?」
「!」

有沢まみずラッキーチャンス!4』より引用)

『扱いやすいギャグ』としての萌えエロ

 萌えエロ系のライトノベルが近年増加傾向にあるという。
 勿論、エロを前面に押し出した作品の方が売れるという傾向がある限り、許される(精神的にグロく感じない、倫理的に不味くない、という二重の意味において)限り、そういった作品が増えてくるのは当然のことだろう。
 ただそういったマーケティング的な要素を抜きにしても、ライトノベルの作者が『扱いやすいギャグ』としてのエロを使いたいと思うのは当然かも知れない。
 ここで言う『扱いやすいギャグ』というのは、大ウケは狙えないがどこにでも入れられて、そして外してもあまり寒くならないギャグのことだ。
 ライトノベル、特に萌えを中心に書かれている作品内には当然魅力的な女の子キャラが多く出てくるため、ハプニングや誘惑や誤解、何を発端してもエロいギャグを挿入することができる。
 さらにそのエロ面白くなかったとしても「このシーンの読者へのサービスだった」という名目が立つ。ギャグとして実に当たり障りがないものなのではないか、と思える。

 なんてことを、ニコニコ動画でちょっとエロいシーンが出てくるといっぱい「wwwww」と草がいっぱい生える風景を見て、考えた。

ラッキーチャンス!4』感想

 最近増えている萌えエロから考えると、この『ラッキーチャンス!』の中に出てくるお色気というのは随分可愛らしい類の物だろうが、『いぬかみっ!』時代からそうそうであったように、この作者変態を出すと急に活き活きし始める。魂が滅んでもマサトを許せないという社長の心の叫びが胸に響きました。バカだけど。
ラッキーチャンス!4』には短いプロローグとエピローグ、そして三つの短篇が収録されている。三つの短篇は「第一話」「第二話」「第三話」とそれぞれ独立しているが、第一話に出てくる占いが「第二話」「第三話」にも影響する、という形で統一感を持たせている。
 内容は占いを気にしたり、プールに行ったり、自縛霊を除去したり――うっかりすると「ごえん使い」の設定を忘れそうになるけど、ちゃんと第三話では仕事してます。
 キチやトトのまっすぐな好意と、自分の好意に気づけない二之宮さんと、ツンデレの天草さん。個性的なキャラの織りなす非日常的な日常。
 微妙なキャラの心理や距離感に変化はあったのだろうけどお話は何も進展しちゃいねーと思いつつ、なにやら意味深なエピローグ。けどもうちょっとこんな感じで続いていく予感はするなー。